大変な駆け引きが繰り広げられたクラシコ。メッシが伝説のプレーヤーと並んだ日。
公開日:
:
サッカー
クリスマスウィークの週末。サンチャゴ・ベルナベウ、レアル・マドリーの本拠地にてクラシコが行われた。普通なら「ホームのマドリー」に軍配が・・・てな手はずなんだけど、今回は予想に反して、アウェーのバルセロナが3点差をつけて完璧なる勝利を飾った。
と、言うのが、凡その試合評だ。そらまぁ、得点だけを見ればその通りだろう。退場者を出したレアルは、最後は捨て身の怒涛をくり返すものの、そうなれば、広大に広がった裏のスペースをバルサに突かれるわけで、3点目はまさにそんな感じで、レアルにとってみれば「やられた」感はハンパない。
しかし、前半は、完全にレアルペース。コバチッチがメッシをがんじがらめにしようと、ピッタリマーク。その上、レアル全員がまるで10対10のマンマークマッチを練習するかのようにビッチリと密着して、あの華麗なるバルサのティキ・タカを封じ込めた。
出し手がなくなったバルサにレアルが襲い掛かる。ボールカット時は、バルサのパスミスのように見えるが、これもレアルの抜群の連携と距離感を保った守備網がなせるワザ。まさにホームのレアルがバッチリとゲームを支配した。もしクリロナの空振りがなかったら・・・。もしベンゼマのヘッドがもう少し中に入っていればた・・・。もちろん勝負ごとに「たら」「れば」は禁物ではあるものの、レアル先制というのも時間の問題かと思われた。
完全にジダンの戦略は、コバチッチシステムは機能していた。ただ、この中でちょっと異様なシーンを3回バルサに見せつけてしまった。実はこれが命取りになる。それはコバチッチが、なんとボールに行かずにメッシに付いたのである。サッカーのイロハのイ。DFのイロナのイ。それはボールにまず対応するということ。フリーの相手が自分に向かってきたら、自分のマーク相手は一旦放り出し手もその相対する相手に反応しなければならない。
もちろん超が付くほどのエリート軍団であるレアルの選手がそれを知らないわけがない。それでもコバチッキはメッシに付いたのだ。
ラキティッチはきっとこう思っただろう「こいつ・・・マジか?」と。「俺がドフリーでもメッシに付くのか?」と。そしてメッシもこう思っただろう。「もし俺がサイドラインの上でじっとしてても、こいつは俺にピッタリと付くのか?」と。
ちょうど、74年のW杯で、西ドイツのDF、フォクツが、オランダのクライフに完全密着マークをして、クライフがサイドラインを出て靴紐を結び直していたときも、なんとその靴紐を結ぶクライフをじっとそばでマンマークしていた・・・あんな感じだ。
<Sponsered Link>
後半になって、この前半の小さな発見が、大きなゴールを生むことになる。後半になってメッシの動きが明らかに変わった。最前線に入ってそのまま動きを止めたのだ。メッシに密着するコバチッチは、これで自然と最終ラインに重なり、埋もれる(中盤から消える)ようになる。メッシも消えるがコバチッチも消えた。そのお陰でカゼミーロとコバッチッチの間に今まで絶対になかった「大空間」が発生した。その大きな空間を、まるで大通りのようなぽっかり空いたスペースを、ラキティッチが独走で邁進する。
「おいおい、ホンマに俺に付かんとメッシに付くのかよ?オレ、もうここまで来てるんだぜ?ここからならドフリーでミドルだって撃てるんだぜ?」と言わんばかりにペナコまで一人でフリードリブル。さすがにラキティッチに付こうとした瞬間に、速攻での綺麗な得点が決まった。
今までのレアルでは考えられないような崩れようだった。この間、メッシは見てるだけ。でも、その見てるだけのプレーが予想外のスペースを作り出していた。
今まで僕はメッシというのはとにかくボールを触っている時だけがその威力を発揮する選手であり、システムやゲームプランや駆け引きや、そんなもんはほとんど考慮していない、そんな選手だと思っていた。もっと言うなら「ボール持ってるときだけやん」という・・・ちょっと見くびっていたのかもしれない。
このプレーがメッシ本人の判断なのか、監督の指示なのかは解らない。おそらくその両方なのだろう。それでもメッシという選手の底知れぬセンスを見せつけられた、そんな試合だった。この試合ではメッシがあの伝説のクライフになったかのように見えた。そう思うのは私だけだろうか?
サイドバナー
関連記事
-
-
小笠原満男引退!また一人、ゴールデンエイジが消えていく。そしてあの男は?
日本サッカー界で、燦然と輝いた年代があります。年代=エイジ。燦然と=ゴールデンということで、この年代
-
-
コロンビア戦直前!歴代監督緊急座談会
ついにワールドカップが開幕した。そして『グループH』の初戦がもうそこに、本当にもうすぐそこ!に、やっ
-
-
アジアカップ決勝、カタール戦直前!歴代監督緊急座談会
ついにアジアカップも残すところ決勝戦のみとなった。新しい代表監督である「森保一」率いる「ポイチ・ジャ
-
-
代表がいっぱい。令和元年の6月は代表三昧!
令和になって1ヶ月強。いよいよ6月15日からは、コパ・アメリカが始まる。東日本大震災のために、辞退し
-
-
結果が大事?プロセスが大事?サッカーの実在派と実証派との間の話。
先日読んだ「物理学」の本で面白い表現がありましたので、ここでちょっと引用させていただきます。
-
-
究極の対決(選択)!気持ちが引き裂かれる対戦。試合の結果は?
その昔、それは今から20年前のことです。1998年。日本代表が初めてワールドカップに出場しました。ワ
-
-
西野ブランド赤丸急上昇!セネガル戦の採点
それではセネガル戦(WC)の採点です。 GK 川島 5.5 出た出た出た出た~~
-
-
「読裏クラブのワンツー通し」が遂に書籍化決定へ!?
スポナビさんにて、2008年から始めたブログ「読裏クラブのワンツー通し」が、この春になんと!「本」に
-
-
「死の組」だらけ!だからオモロイ!ユーロ2020組合せ(ほぼ)決定!
今年もあと一ヵ月で終わろうとしております。そして、いよいよ来年はオリンピック!東京オリンピック202